著作権問題が国境をこえて発生している場合、法律の違いなどから物事が複雑になりがちです。それは世界中でそれぞれ国がどのように著作権を捉えているかに大きく左右されるからです。本記事では主にヨーロッパとアメリカの著作権について知っておくべきことを記事にまとめています。
英語の「Copyright」という言葉はドイツ語では「Urheberrecht」(ここではヨーロッパの著作権とします) の同意語として、実際のその解釈は大きく異なるものではありますが使用されています。ヨーロッパの著作権は当該作品の創作者に直接焦点を当てていますが、アメリカの著作権は利用権と潜在的な経済的影響に向けられています。本記事ではこの2つのシステムを深く掘り下げていきます。
「創作者」とは誰のこと?
ヨーロッパの著作権の文章上において、創作者とは問題となる作品の製作者のことを指します。著作権はこの個人にのみ帰属し、第三者に譲渡することは出来ません。しかしながら創作者はライセンスという形式で作品の独占権を第三者に許可する手順を簡易化することができます。これは伝統的にヨーロッパ大陸の著作権における最も一般的な形式になっています。
UrhG(著作権とその関連する権利に関するドイツ法) §10によると作品の創作者であるということはその言葉の通り創作元を指しています。そのため創作をしたら、作品の創作者として自分を示すということ、それを第三者に知らせるということはとても重要なのです。
この優先権の証明と言われるものはUrhGの規定§10の要件であり、以下のように定められています。
“公開された作品のコピーまたは芸術作品の原作において通常の方法で作者として指定された者は、それに対抗する証拠がない場合にその作品の作者とみなされる ; これは同様に指定されたものが仮名や芸名で知られている場合にも同様に適用される。“
ヨーロッパでの著作権
ドイツ語での‘Urheberrecht’(創作者の権利)から見るに、創作者が著作権法の中心にいることは明らかです。この定義はヨーロッパ大陸の主要な言語にも広がっており、イタリア語では‘diritto d’autore’、フランス語では‘droit d’auteur’、スペイン語では‘derecho de autor’、オランダ語では‘auteursrecht’、スウェーデン語では’ upphovsrätt‘、ポーランド語では‘prawa autorskie’ と呼ばれています。この全ての言語で作品の創作者は著作権の名前そのものとして示されています。前述の国々での著作権法の適用も同じ原則に基づいています。ヨーロッパの著作権法についての詳細はこちらの記事もご参考にご覧ください。Copyright Law in Europe Explained
英米での著作権は何を意味しているのか?
copyrightという言葉は、アメリカ、イギリス、カナダなど、英語を話す主要国で広く使用されています。アメリカでの著作権は経済的価値がある他のものと同様、第三者に譲渡ができるという点でヨーロッパ法のそれとは異なった働きをします。先ほど説明したドイツ法での意味とは別に、著作権者が必ずしも作品の創作者でなければいけないわけではありません。その代わりに単純にライセンサーや許可を与える所有者として作用します。
ヨーロッパとアメリカの著作権の歴史的背景
ヨーロッパとアメリカの著作権法の違いの理解を深めようとする上で、始まった時の歴史的背景を知ることは大きな助けとなるでしょう。ヨーロッパの著作権はフランス革命時(1789-1799)の人文主義的かつクリエイティブな気運の高まりから生まれ、その時に初めての現代的な著作権法が制定されました。
その間、英語の用語としてのcopyrightは1709年のアン法(State of Anne)まで遡り確認されています。著作権はそもそも多大な資金を費やして購入した原稿の違法な複製から原稿の購入者である出版者の権利を守り、それによって教育の改善や知識の流通を図るということを目的としていました。
ヨーロッパとアメリカの著作権の細かい部分の違いは?
アメリカの著作権が当該作品の使用権を保護している一方、ヨーロッパの著作権では創作者を保護しています。言い換えると、アメリカの著作権は第一に経済的側面に焦点が向けられていますが、ヨーロッパの著作権は作品の制作者を保護するということに重きを置いています。 こう言った違いは、さまざまなヨーロッパ言語での著作権という単語の翻訳そのものから見られるはずです。
Moral rights (著作者人格権)は創作者と作品の関係を守るためにヨーロッパの著作権に含まれています。著作権者はドイツの法律で認められる明示的な権利も保有します。著作権の状態の表示方法を決定するのは著作権者に委ねられています。また著作権者は彼らの作品を改ざんから守る権利を有します。ドイツの法律では著作権者の人格権は所有者の経済的権利よりも高い場所に位置していることに注意しなければなりません。それとは対照的にアメリカの著作権法では創作者の人格権はそこまで明らかに強調されてはいません。
-
ヨーロッパとアメリカの両方の著作権は、出版者の経済的利益を保護し、著作物の公共の利益を支持します。
-
ヨーロッパの著作権では著作権全体を第三者に譲渡することは不可能です。創作者が死亡した場合に限り著作権は彼らの財産になるか完全に破棄されます。
-
アメリカの著作権では著作権者の権利全てが第三者に譲渡可能です。ここからパブリックドメインが生まれました。アメリカの著作権法では著作権の転売も可能です。
-
ヨーロッパの著作権では作品の著作権者自身が必ずその作品の創作者です。
-
これはアメリカの著作権法においてはそうでないこともあり「職務著作権」の権利は特定の雇用条件により自動的に雇用主に移行する場合があります。
著作権者と大衆との利益のバランスについて
ヨーロッパとアメリカの著作権の両方が、著作権者の利益と大衆の利益のバランスを取らなくてはなりません。これに対するそれぞれの法的アプローチを紹介します。
ヨーロッパの著作権法では著作権で保護された作品の使用が許可されることがあるという例外的なケースがいくつかあります。プライベートでの使用や教育や調査目的での作品の使用はこれに当てはめられます。同様な定めがヨーロッパ大陸のほとんどの国で存在しています。またこの特例は3段階の確認にて定義付けされています。(1)著作権者の利益は例外的な状況下でのみ制限され (2)作品の通常の所有権が侵害されており (3)著作権者の正当な利益が不合理な物でない場合と明言されています。
これとは対照的にアメリカの著作権はfair use(フェアユース)という言葉を使用しており、これはある特定の文章にて著作権者の許可なしに保護されている作品が使用可能になると明言されています。注意すべきもう一つのアメリカの著作権用語はfirst sale doctrine(ファーストセール・ドクトリン)で、これは既に一般市場で出回っている作品は制限なしに転売可能であるということを意味しています。アメリカの州内ではfair dealing (フェアディーリング)規則により研究、レビューの執筆またはレポート編集など個人使用を条件として作品の複製を少数作成することができます。
作品の使用がフェアであるかどうかが議題に上がった時考慮する必要がある主な要因は次のとおりです : 作品の使用目的、保護対象の作品のタイプ、オリジナル作品に関連する新しい作品の重要性そしてオリジナル作品に対して新しい作品がマイナスに働く要素の有無。
その他の重要な要素として新しい作品は商用であるのか(収入を得る目的で作成されているのか)または完全なプライベートでの使用なのか、広告目的なのか教育目的なのか、またオリジナル作品が全て使用されたのか一部のみなのかと言うものも含まれ考慮されます。著作権者の正当な利益の侵害度が低ければ低いほど、その作品がフェアに使用されている可能性が高くなります。
著作権登録をすることのメリット
ヨーロッパの著作権法と同様に、アメリカでは作品が創作されると同時に自動的に著作権によって保護されます。つまり著作権登録は実際には画像の著作権を所持するために必ずしも必要なものではないと言えます。
しかし実際には多くの場合、著作権登録はされています。その理由は損害侵害が発生した時この登録は著作権の帰属を迅速かつ容易に証明できるという利点があるからです。もし損害賠償請求になった場合には著作権登録が裁判手続きの際に証拠として使用可能です。さらにアメリカの法律下では著作権登録作品は有利に作用するため、登録された作品の著作権者はさらに多くの恩恵を受けることができます。
多くの著者が知らない事は、訴訟時に原告のフォトグラファーは自身が著作権者であることを説明するだけでなく、相手方と議論になった場合には写真の著者であることを証明しなければならないということです。これは自身が当該写真を撮影した人物であると言うことを証明しなければならないことを意味しており、多くの証明方法がある中で著作権登録は一番簡単な方法として使用されています。
いくつかの国では米国著作権局などの国家的な登録方法が既に確立されています。しかしながら最近ではフォトグラファーはオンラインで画像を登録することもでき、またブロックチェーンベースの著作権登録サービスConcensum(コンセンサム)を通して世界規模で作品を認証することができるようになりました。
著作権シンボル©について
この©︎シンボルはドイツ国内では何の意味も無く、ただその作品が著作権で守られていることを世界に認識してもらうための注意書き以外の何でもありません。ドイツで使用はされることもありますが、これも正しい著作権やり方での完了時に限られます。著作権が使用されている場所が第三者の著作物と一緒になっている場合、または著作権者の名前が誤って記載されている場合には注意が必要であり、これにより差止命令および賠償請求が著作権者自身に対して行われる可能性があります。
たとえ新しい著作物が自動で守られるようになったとはいえ、様々な場所で未だに©︎シンボルを目にすることでしょう。これには著作権が導入されていると言う事実を使用者に認識させられると言うメリットがあります。また潜在的に発生する無断転載を妨げ、シンボルなしの作品は著作権によって守られていないと考える人々から著作物を守ることができます。著作権シンボルは多くの場合著作権者の名前と共に表示され、それは著作権の所在を裁判で証明する際に使用され、多くの時間と労力の節約に役立っています。ヨーロッパのシステムでは著作権者は著作物と共に記載された人であるとされています。そのような場合は©︎シンボルは必要ありません。
誰が創作者で、誰が著作権者?
ヨーロッパとアメリカのさまざまな著作権は、主に2種類の著作権保護を形成しています。この2つの関係は互換性がありますが、まったく異なる哲学に基づいています。ドイツのシステムは、経済的側面の広い概観を維持しながら作品の制作者と彼らの作品との理想的な関係を保護することを目的としています。一方アメリカの著作権は、著作権者の経済的利益に重点を置き当該作品の使用権を保護します。
Written by Florian Moritz & Dr. Daniela Mohr